一生モノ工場|セキスイハイム×PENコラボレーションプロジェクトスペシャルサイト

小山薫堂(放送作家)・谷尻誠・吉田愛(SUPPOSE DESIGN OFFICE)が考える「一生モノの住宅」とは

合理的かつ安心の設計と施工が可能、そして自由にアレンジできる「新しい住宅」……。そんなワガママを実現してくれる理想の家を求めて、放送作家の小山薫堂さんが、住宅メーカー工場へと視察に出かけた。これまでに数々の住宅プランを手がけてきた建築家、サポーズデザインオフィスの谷尻誠さんと吉田愛さんも同行し、目指したのは東京近郊にあるセキスイハイムの工場。「プレハブ」という日本がもっとも得意とする建築工法を駆使した、これからの住宅の可能性とは。放送作家と建築家が新しい住宅の方向性を考える。
セキスイハイム × Pen - セキスイハイムと雑誌「Pen」とのコラボレーションプロジェクト

VOL.02 住宅空想編 建築家とメーカーが考えた、新薫堂邸。

今年7月に、埼玉県にあるセキスイハイムの生産工場を一緒に訪れた放送作家の小山薫堂さんとサポーズデザインオフィスの谷尻誠さん、吉田愛さん。システマチックでクリーンな工場のなかでスピーディにつくられていく高品質&高機能な住宅の特長を活かした薫堂さんの別荘プランを考えてみようと、再び顔を合わせた。

ムービー Vol.02 「住宅空想」編

配置によって考えられる、色々な家のカタチ。

小山
工場を訪れた後にもいろいろとお話ししましたが、おふたりは、正直なところセキスイハイムの家をどのように理解されましたか。
谷尻
まず鉄骨のユニットは、実にシンプルで美しいカタチをしていると思いました。また、ユニットごとに完全に独立した構造であるのもおもしろいですね。
吉田
だからこそ、「配置によっていろんな家のカタチが考えられるよね」って話し合っていたんです。
小山
なるほど。ではそのアイデアを元に考えていただいた私の別荘プランを見せていただいてもいいですか。
吉田
前回お会いした時に、薫堂さんが「人がたくさん集まって、みんなが仲よくなれる家がほしい」とおっしゃっていたことを軸に、「まっすぐな家」と「蛇行する家」という2つの開放的な居住空間を考えてみました。
谷尻
2つの案はカタチこそ違いますが、どちらもコンセプトは同じ。美しいランドスケープのなかで、ヴィラのように居室を点在させ、ひとつの大きな屋根でつないでいったものです。

景色を一直線で捉える、「まっすぐな家」。ギャラリーのような、連続して並ぶ部屋。

このプランでは、ユニットのカタマリを横方向に連続して並べている。ギャラリーやダイニングキッチンなど各カタマリに用途があり、その隙間にできた空間はテラスとしてはもちろん、シアターやダイニング、ガーデニングなど、住み手の好みに応じて自由にアレンジ。「縁側を現代風に巨大にしてみました」とふたりは語る。

角度を違えながらつながる、自由に「蛇行する家」。目的に応じて変える、ジグザグ状のユニット

2~4のユニットを分棟形式で角度をそれぞれに違えながら配置し、ジグザグとうねるユニークな形状の建屋。このプランの特徴として、敷地の形状や景色、太陽の角度などに応じてユニットの振りをさまざまにアレンジでき汎用性も高い。ユニットと構造的に分離させた大きな屋根は「ダブルルーフ」で一軒の建屋に見せている。
※ここで紹介したプランは、サポーズデザインオフィスがセキスイハイムの概略ルールから構想した案です。実際にこのまま建築が可能というわけではありません。

レイアウトの自由を促す、独立したユニット工法。

小山
この部屋のように見えている部分に工場でつくるユニットを使っているんでしょうか?
吉田
はい。セキスイハイムのユニット工法は、柱と梁だけで荷重や外力に十分に耐えうる堅牢なラーメン構造なので、その特性を活かしたプランになっています。
谷尻
まず、土地の形状に合わせてユニットを縦横につなげたり、自在に並べ替えたりできるかなと考えました。さらに壁面に筋交いが不要ということで、大胆に開口部を設け、目の前に広がる壮大な景色を家の中に取り込む案としました。
小山
ユニット間に設けられた空間は、一体どんな意味をもった場所になるんでしょうか。
吉田
ここは、部屋と部屋の間をつなぐ「屋根付きの中庭」。昔の日本家屋にはよく見られた縁側のように、家の外と中をつなぐ中間域を大きく捉えたものです。
谷尻
たとえば山の中でキャンプをする時、テントの周囲に大きなタープを張りますよね。居住空間の近くにみんなで共有できるスペースがあると、そこに自然に人が集まり、和気あいあいとしたムードが生まれる。それと同じで、このプランでは居室の外に天候に左右されず気軽に出られる場所をいくつか設けることで、大勢の友人が集まっても同じ場所に人が滞留せずストレスなく交流を重ねることができると思ったんです。
セキスイハイムの家は、工場で生産されるユニットが基本になる。天気に左右されることのない屋根の下で家の大部分がつくられるため、耐震性やほかの住性能を確実に発揮できる安定品質が売りだ。

デザインの必要性がない、高機能&高品質な構造体。

小山
開放的なのはいいのですが、お風呂などはどうですか?
谷尻
大丈夫です。ちゃんと入浴する時は外からは見えないように考えていますよ(笑)。プライバシーは守りながらも、開放的でもある。お風呂上がりには、この半屋外スペースで自然な風を浴びながら、ゆったりと湯上がりの時間を寛ぐ。そんなぜいたくもありなんじゃないかと。
小山
それぞれの居室の役割を入れ替えることも可能なんですか?
吉田
もちろんです。ラーメン構造のユニットは内部の自由度が高いので、施主の希望や地形に合わせて、色々と組み替えることができるはずです。
谷尻
今回の案にあるような大きな屋根は工場で生産できないと聞きました。なので構造的に縁を切った「ダブルルーフ」にすることでユニット工法と両立させ、解決できないかと考えています。
小山
一見、シンプルな箱の集合体に見えますが、このなかにいろいろな新しい家の可能性が秘められているんですね。
吉田
今回の案ではユニットの構成があまりにも明快なので、そこに余分なデザインやデコレーションはほとんどしていません。
谷尻
昔の日本の民家には、部屋そのものに決まった役割はありませんでした。ちゃぶ台を置けばダイニングになり、布団を敷けば寝室になる。この家はそれと同じで、使う人が自分なりの方法でアレンジできる可能性をもっているんです。
小山
染色家の吉岡幸雄さんと以前お話しした時、「家を建てる時は8割くらいまで完成させておいて、あとは暮らしながら足していく」とおっしゃっていたことを思い出しました。
吉田
私たちも、日頃からあえて〝未完成の家”を目指しています。そのほうが、住み手が自分で家を育てていくことができますから。
小山
これは本当に育てがいのありそうな家ですね。技術的な課題はいろいろあるようですが、こんな家に実際に住むことができたらどんなに楽しいんだろうって心躍ります。まずはこの家が建てられる魅力的な環境を探すことから始めなきゃですね。

CONTENTS

プロフィール

放送作家 小山薫堂

放送作家 小山薫堂

1964年熊本県生まれ。大学在学中に放送作家デビュー。代表作に「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」「東京ワンダーホテル」など。2008年に脚本を手がけた映画『おくりびと』では、第60回読売文学賞戯曲・シナリオ部門賞などを受賞。現在、BS朝日「アーツ&クラフツ商会」を企画・監修。「くまモン」の生みの親でもある。

建築家 谷尻 誠 / 吉田 愛

建築家 谷尻 誠 / 吉田 愛

SUPPOSE DESIGN OFFICE
ともに1974年広島県生まれ。穴吹デザイン専門学校卒業。建築やデザイン事務所での経験を積み2000年に独立(吉田は2001年に参加)。SUPPOSE DESIGN OFFICEを設立。独自の視点と自由な発想で、これまでに100棟以上の住宅設計に携わってきた。現在は広島と東京の2カ所に拠点を構え、住宅以外にも、国内外の多様なプロジェクトに携わっている。

写真:矢野紀行